トゲが皮膚に刺さった際、多くの人がやってしまいがちなのが「マチ針や安全ピンで皮膚をめくってほじくり出す」という強硬手段です。しかし、救急救命センターや皮膚科の現場医師らへの取材によると、自力で無理にいじくり回した結果、傷口を悪化させて診察室へ駆け込む患者が後を絶ちません。
皮膚の最外層にある角質層は厚さわずか0.02ミリメートル程度しかありません。その下には毛細血管や知覚神経が密集する真皮層が控えています。肉眼で見えにくいトゲを先端の太い針先で探ると、周囲の正常な細胞組織を無駄に挫滅させ、トゲ自体を途中で折って破片を真皮深層へと押し込んでしまいます。こうなると、異物を取り除く難易度は一気に跳ね上がります。
さらに深刻なのが、器具や手指を介した二次感染の危険性です。人間の皮膚表面には黄色ブドウ球菌などの常在菌が存在しており、傷口からこれらが侵入すると、数時間から数日で患部が赤く腫れ上がり、触れなくてもズキズキと拍動するような強い痛みに見舞われます。最悪の場合、皮下組織に広範な炎症が広がる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」へと発展し、抗生物質の点滴や切開排膿が必要になるケースすら珍しくありません。