夜の街から実業家へと華麗に転身した人物に対して、インターネット上で常に囁かれるのが「裏に大物フィクサーや資産家のパトロンがいるのではないか」という穿った見方です。女性が若くして数億円以上の資産を築いた際、ステレオタイプな偏見からこのような憶測が生まれがちですが、愛沢えみりの財務構造を丹念に追跡すると、その説が論理的に破綻していることが分かります。
彼女の成功を支えたのは、怪しげな資金提供者ではなく、「冷徹なまでのキャッシュフロー管理とD2Cビジネスの先駆性」です。
EmiriaWizの立ち上げ時、彼女は多額の借金をして旗艦店を出店する従来のアパレル方式を一切取りませんでした。まずはECサイトのみでスタートし、自身がモデルとなってInstagramやブログでコーディネートを発信。受注予測を細かく立てながら小ロット生産を行い、在庫を抱え込まない「ファブレス経営」を徹底したのです。一般的なアパレル企業が頭を抱える「大量の売れ残り在庫による値引き販売」を極限まで排除したため、粗利益率は業界水準を遥かに上回る60〜70%超を叩き出しました。
また、彼女が賢明だったのは、「自分自身のキャラクター消費の賞味期限」を極めて早い段階から自覚していたことです。夜の蝶としての人気は永遠には続かない。容姿の衰えやライフステージの変化を見越した彼女は、自著『愛沢えみりの“一生かわいい”美のルール』やビジネス書の中でも「属人性の排除」について度々言及しています。自らが前面に出なくても売れるプロダクト作りへとシフトし、norm+のような機能性重視のスキンケア開発や、専門医療従事者が主役となるクリニック事業へと資金を投下していったのです。これは外部のパトロンに頼っていては絶対に実現できない、骨太な事業構想力にほかなりません。