この離婚劇において、経済誌や世間の視線を一瞬で釘付けにしたのが、文字通り規格外の「財産分与」である。長年積み上げた自宅、世田谷のガレージ、莫大な不動産や株式資産のほとんどを幹子氏に譲渡し、自らは最低限の生活資金と愛車だけを手にして再スタートを切ったという事実は、まさに伝説として語り継がれている。
さらに、この動きと切っても切り離せないのが、自らの城であった「オフィス北野」からの独立劇だ。長年苦楽を共にしてきた弟子たちやスタッフとの軋轢、経営方針を巡る内部の混乱の末、たけしは慣れ親しんだ看板を捨て、新たなパートナーと共に新事務所を設立。2026年現在の視点から改めて振り返ると、この一連の独立と財産分与は、己の創作意欲を最期まで燃やし尽くすために全てを削ぎ落とした、孤高の映画監督による究極の断捨離だったことが浮かび上がる。