かつて坂本日登美としてマットに上がっていた彼女は、世界選手権を何度も制しながらも、北京五輪への出場を逃し、一度は引退を決意した。心身ともに燃え尽き、重度のうつ状態に陥った彼女を救ったのが、後に夫となる康司氏だった。「もう一度、レスリングをやろう」ではなく、「生きていてくれればそれでいい」という言葉が、彼女の凍りついた心を溶かしたという。
この無条件の受容こそが、彼女の再生の第一歩となった。競技者としてではなく、一人の人間として向き合う姿勢が、彼女の中に眠っていた闘志を静かに呼び覚ましたのである。