志村けんさんのコントに対して、「アドリブで適当に騒いでいるだけ」「下品なギャグを連発している」といった誤解を持つ層がごく一部に存在します。しかし、これは実態とは正反対です。
志村さんの代名詞である「バカ殿様」や「変なおじさん」、ひとみ婆さんといった国民的キャラクターは、緻密な人間観察と徹底した「0コンマ何秒の間の計算」によって構築された、極めて高度な職人芸でした。
自著『変なおじさん』の中で、志村さんは自らのコント哲学について次のように語っています。
「笑いっていうのは、緊張と緩和なんだ。徹底的に計算された段取りがあるからこそ、ちょっとしたズレや間の変化でお客さんがドッと笑う。偶然の笑いなんて長続きしない」
志村さんはアメリカのブラックミュージック(ソウルやファンク)への造詣が極めて深く、ドリフのコントや自身の番組のBGMにいち早くファンクビートを取り入れた先駆者でもありました。コントのテンポ、リアクションの効果音、立ち位置、目線の動かし方に至るまで、自ら台本を書き直し、リハーサルを何度も重ねる徹底的な完璧主義者だったのです。
「変なおじさん」の奇妙なダンスも、単なる思いつきではなく、志村さんが敬愛していた海外のコメディアンやジャズのステップを日本人向けにデフォルメした高度な身体表現でした。表面的なバカバカしさの裏に、徹底したストイックさと緻密な計算が存在していた点こそ、時代を超えて愛される最大の理由です。