学校のシンボルや七不思議として語り継がれてきた名物にも、教育現場の実情と歴史的経緯が存在します。SNSや知恵袋などで議論が絶えない2大トピックについて、教育関係者へのヒアリングと一次史料から真相を検証します。
かつて全国の小学校校庭に設置されていた二宮金次郎像撤去理由について、インターネット上では「歩きスマホを助長するから」「児童に過重労働を強いる印象を与えるから」という俗説がまことしやかに語られています。しかし、自治体教育委員会や学校管理者の証言を総合すると、撤去の根本原因は別のところにあります。
最大の理由は、「昭和初期に建立されたコンクリート像や銅像の老朽化による倒壊危険」と「校舎建て替え・耐震改修工事に伴う配置見直し」です。1995年の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災以降、学校敷地内の石碑や彫像の耐震基準が厳格化されました。台座のひび割れや鉄筋の腐食が見つかった像が、児童の避難経路の安全確保のために撤去・保管庫行きとなったケースが全体の7割以上を占めています。なお、近年新設される金次郎像は、薪を背負って歩く姿ではなく「腰掛けて読書する座像」を採用する例が増えており、これも現代の交通安全指導との整合性を考慮した結果です。
一方、夜になると目が動くなどの怪談の舞台にされがちな音楽室の肖像画の謎(バッハ、ヘンデル、ベートーヴェン、モーツァルトら)にも、出版界と教育界の歴史が絡んでいます。あの肖像画が一様に厳しい表情をしている理由は、以下の3つの要素が重なったためです。
- 18〜19世紀当時の肖像画の様式美:写真技術がない時代、肖像画は宮廷や貴族、後世に向けた「威厳と権威の証明」であり、笑顔を見せる文化が存在しなかったこと。
- 当時のカツラや正装文化:バッハやヘンデルが被っている巨大な巻き毛は当時の上流階級の礼装(かつら)であり、現代の日本の児童には特異で不気味に映りやすいこと。
- 教材ポスターの印刷技術:昭和中期に各教室へ一斉配備された教材会社制作の肖像画セットは、暗褐色の油絵原本を多色オフセット印刷したため、黒の陰影が強調されて視線が鋭く見えたこと。