タブーを撃ち抜く異端児・大島渚の衝撃作と熱狂の制作秘話を追う

タブーを撃ち抜く異端児・大島渚の衝撃作と熱狂の制作秘話を追う

タブーを撃ち抜く異端児・大島渚の衝撃作と熱狂の制作秘話を追うの特集記事をご紹介します。専門的な知識が詰まっています。

1976年、大島は世界中の映画界を激震させる一作を放つ。『愛のコリーダ』である。昭和初期に起きた「阿部定事件」を題材に、男女の究極の愛欲を描いた本作は、本物の性描写を取り入れたことで一大スキャンダルを巻き起こした。

日本の厳格な検閲を回避するため、フィルムをフランスへ空輸して現地で現像・編集を行うという前代未聞の国際共同製作スタイルを採用。同年のカンヌ国際映画祭監督週間で初上映されると、劇場周辺は観客の長蛇の列で埋め尽くされ、世界的なセンセーションとなった。日本では税関でのフィルム差し押さえや書籍の出版を巡る裁判へと発展したが、大島は法廷で表現の自由を毅然と主張し、無罪を勝ち取った。

彼が描こうとしたのは、単なるポルノグラフィではない。軍国主義の足音が近づく暗黒の時代において、社会の狂気から逃避し、互いの肉体と情念だけに没入していく男女の姿だった。エロスを極限まで突き詰めることこそが、ファシズムに対する最も根源的なレジスタンスである——それこそが、大島がフィルムに刻み込んだ真の意図だった。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。