タンザニアのゴンベ渓谷でチンパンジー研究の扉を開いたジェーン・グドール氏の足跡は、寿命研究の土台そのものである。彼女が半世紀以上前に始めた個体識別観察によって、チンパンジーが単なる本能の塊ではなく、複雑な感情と血縁関係を持つことが判明した。
動物行動学の視点から特に注目されたのは、母親との強い愛着形成や仲間同士の親密な毛づくろい(グルーミング)が、ストレスを低減させて個体の生存率を高めるという事実だ。社会的に孤立した個体は病にかかりやすく早死にする傾向がある。強い社会的絆こそが、過酷な自然界で寿命を延ばすための最強の適応戦略であることが、ゴンベの膨大な観察記録から浮き彫りになっている。