日本国内の住宅環境において混同されやすい多足類は、主に「ムカデ」「ヤスデ」、そして時に室内に高速で現れる「ゲジゲジ」の3種です。これらはすべて節足動物門の多足亜門に属しますが、綱(こう)のレベルで明確に異なる生物群に分かれています。
現場の防除技術者や生物学者が識別する際、最初に着目するのが「1つの体節(胴体のくびれ)から何対の足が生えているか」という構造的差異です。ムカデ(唇脚綱)は1体節あたり「1対(左右で2本)」の足を持ち、ヤスデ(倍脚綱)は体節あたり「2対(左右で4本)」の足を有しています。ヤスデが「倍脚類」と呼ばれる所以はここにあり、これが最も狂いのない形態的特徴です。
また、足の構造の違いはダイレクトに「動きの速度の違い」へと直結します。ムカデは身体全体を左右に大きく波打たせながら、獲物を追跡するために驚くべき敏捷性で突進してきます。対してヤスデは、無数の短い足を進行方向に向けて協調運動させ、まるで波が揺れるようにゆっくりと滑らか前進します。危険を感じた際に「素早く逃げる、あるいは飛びかかってくるのがムカデ」「その場で身を固めて渦巻き状に丸くなるのがヤスデ」と覚えておけば、至近距離で足を数えなくても瞬時に判別が可能です。