スクリーンから溢れ出る異常な緊迫感は、日本最高峰の俳優陣が身を削って挑んだ演技の賜物だ。とりわけ作品の重警圧を支えるのが渡辺謙の佇まいである。娘を救いたいと願いながらも、過去の傷や世間の目に怯え、娘の愛した田代を警察に売ってしまう父親・洋平の狼狽と悲哀。その過ちを悟った瞬間に放たれる渡辺謙の咽び泣く演技は、観客の心臓を締め付ける。
また、ゲイのサラリーマン・優馬を演じた妻夫木聡の役作りも鬼気迫るものがあった。役にリアリティを与えるため、撮影前から凄まじい肉体改造を行い、さらにパートナー役の綾野剛と実際に都内のマンションで同居生活を送るという異例のプロセスを経ている。密やかな愛を育みながらも、世間のニュースに惑わされ、直人の死後に初めて彼の本心を知る優馬。公園のベンチで号泣する妻夫木聡の表情には、崩壊した信頼への悔恨が血の通ったリアリティをもって刻まれていた。