電話に対する過剰な怯えの根底には、何が潜んでいるのか。臨床心理学の観点からは、単なるコミュニケーションスキルの不足ではなく、自己のパフォーマンスが他者にリアルタイムで監視・評価されているという「評価懸念」が主因であると指摘されている。
認知療法の創始者であるアーロン・ベックが提唱した認知モデルに照らし合わせれば、「うまく答えられなければ無能の烙印を押される」「言葉に詰まったら周囲から失望される」といった破局的な自動思考が、受話器を手にした瞬間に脳内を支配してしまうのだ。日本精神神経学会の臨床知見でも示されているように、過度の緊張や対人関係における恐怖感は、社交不安障害の一環として現れるケースも珍しくない。つまり、電話を取ることへの拒絶反応は、自己防衛本能が過剰に作動した結果のシグナルと言える。