胃バリウム検査で服用する硫酸バリウム製剤は、水に溶けない重金属の化合物です。X線を透過させない性質を利用して胃粘膜の凹凸を鮮明に映し出す一方、人体にとっては消化・吸収が一切できない異物にほかなりません。検査を終えたバリウムは胃から小腸を通り、大腸へと送られますが、ここで生体の精巧な水分回収システムが仇となります。
大腸の本来の役割は、運ばれてきた消化かすから水分を吸収して適度な硬さの便を形成することです。大腸粘膜が水分を吸収し続ける過程で、水分を失った高比重のバリウム粉末は凝縮され、「バリウム糞石(ふんせき)」と呼ばれるセメント状の硬い塊へと変化します。これがバリウム固まる危険性の根源です。特に普段から便秘がちな方や、検査当日の緊張・ストレスで自律神経が交感神経優位に傾いている人は、腸の蠕動運動が著しく鈍化し、腸内にバリウムが長時間滞留しやすくなります。
検査機関が示す一般的なバリウム排便時間目安は、下剤服用後およそ2〜6時間です。早い人であれば2時間以内に最初の排便があり、薄い泥状の白い便が出始めます。しかし、もともと胃腸の動きが遅い体質であったり、検査後の水分摂取が不十分だったりすると、白い便が出ない理由と経緯がそのまま腸内での「セメント硬化」へと直結します。排便がないまま時間が経過するほど、塊は巨大化し、大腸の内壁を圧迫して強い痛みを引き起こす負の連鎖に陥るのです。