よしながふみの人気漫画『きのう何食べた?』が幅広い共感を呼び続けている理由は、スーパーの特売チラシと睨め合いつつ、一汁三菜の献立を組み立てるシビアかつ温かな生活感覚にある。作中で描かれるのは、豪華なディナーではなく、鮭の炊き込みご飯や豚肉とキャベツの味噌炒めといった、どこにでもある食材で作る滋味深いおかずだ。
物価高の波が押し寄せる現代、単なる贅沢よりも「限られた予算と時間の中で、いかに食卓の幸福度を最大化できるか」に人々の関心が集まっている。同作が示したのは、品数を無理に増やさずとも、温かい汁物とメインの主菜、そして常備菜が一つあれば、心は十分に満たされるという真理だ。凝ったものを作らなければならないという呪縛から解き放たれることこそ、毎日の台所に立つ人間にとって最大の処方箋なのかもしれない。