おならの音を巡っては、科学的根拠を欠いた誤った知識が長年信じ込まれてきました。ここで代表的な3つの誤解を正しておきましょう。
誤解1:「おならを我慢し続ければ、ガスは体内で消えてなくなる」
我慢したおならが胃腸の中で自然消滅することは絶対にありません。直腸に留まったガスは、腸管の内壁(粘膜)を通って毛細血管から血液中に再吸収されます。血管に乗ったガス成分は全身を巡り、最終的には肺に到達して「呼気(吐く息)」として口から排出されたり、皮膚の汗腺から「皮膚ガス」として体外へ放出されたりします。つまり、音を恐れて過剰に我慢し続ける行為は、口臭の悪化や体臭の悪化、さらには肌荒れを誘発する直接的な要因となるのです。
誤解2:「善玉菌のサプリを大量に飲めばおならの音は小さくなる」
乳酸菌やビフィズス菌を摂ればすべて解決するというのも早計です。小腸内で細菌が過剰増殖するSIBO(小腸内細菌増殖症)を患っている場合、良かれと思って摂取した乳酸菌やプレバイオティクス(オリゴ糖・食物繊維)が小腸内で爆発的に発酵し、かえってガス産生量を跳ね上げて腹部膨満感と激しい破裂音を悪化させるケースが少なくありません。体質に合わない菌の乱用は逆効果となります。
誤解3:「肛門括約筋を鍛えて締めれば音は鳴らなくなる」
骨盤底筋体操などで括約筋を強化することは失禁予防には有益ですが、「排気音を消す」という目的においては逆効果になる場合があります。筋肉のトーンが強くなればなるほど、ガスが通過する際の抵抗力が高まり、結果としてより張りのある高周波の音響(甲高い破裂音)を生み出しやすくなるという皮肉な力学構造が存在するためです。