手描きの良さをデジタル上で再現する技術も飛躍的に進化した。イラスト制作ソフトの定番であるCLIP STUDIO PAINTを覗けば、鉛筆のざらつきや水彩絵の具の境界の滲みを精緻にシミュレートするブラシが無数に存在する。多くのイラストレーターが、iPadや液晶タブレット上で「手書きの偶発性」を巧みにコントロールしながら作品を仕上げている。
下書きからペン入れ、着彩までの工程で、あえて完全な直線を引くスナップ機能をオフにする。線の重なりや塗り残しを意図的に残すことで、印刷した際にまるでリトグラフや木版画のような深い陰影が立ち現れる。デジタルツールを駆使しながらも、画面の向こうに鉛筆の芯の匂いを感じさせる職人技が、現代のイラストシーンを牽引している。