「威風堂々」と聞いて、イギリスの作曲家エドワード・エルガーが作曲した管弦楽のための行進曲『威風堂々(Pomp and Circumstance Marches)』を思い浮かべる人は多いはずです。特に第1番の中間部の旋律は、イギリス第2の国歌とも称される『希望と栄光の国(Land of Hope and Glory)』として世界中で愛されています。
この名曲の邦訳がなぜ「威風堂々」となったのか、その背景には緻密な翻訳の歴史があります。
原題の『Pomp and Circumstance』は、イギリスの大文豪ウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇の一つ『オセロ』第3幕第3場の台詞から引用されました。劇中では、名誉ある軍人としての生活に別れを告げる場面で「Pride, pomp, and circumstance of glorious war!(名誉ある戦いの誇り、壮麗、そして華麗なる儀礼よ)」と語られます。
この「Pomp(華麗、壮麗)」と「Circumstance(威式、格式ある儀礼)」の組み合わせに対し、明治から大正期の日本の知識人が古典の四字熟語「威風堂々」を当てはめたとされています。大英帝国の黄金期を象徴する勇壮なメロディと、東洋の重厚な四字熟語が見事な調和を果たした名訳の一例です。