日本映画の金字塔を打ち立てた映画『仁義なき戦い』。その衝撃的なストーリーの骨格を成したのは、呉の美能組元組長・美能幸三が網走刑務所で密かに書き綴った壮絶な手記だった。劇中で菅原文太が演じた主人公・広能昌三のモデルこそ、この美能幸三その人に他ならない。
手記に記されていたのは、映画のような美化された任侠の世界とは程遠いリアルだ。組員の裏切り、プライドのぶつかり合い、そして身内同士の凄惨な血の流し合い。ノンフィクション作家の飯干晃一がこの手記をベースに週刊誌で連載を開始すると、読者はその過激な実態に息をのんだ。フィクションを遥かに凌駕する現実の醜悪さと切なさが、映画の熱狂を生む核となったのだ。