2017年に公開され、第90回アカデミー賞でも高い評価を受けた映画『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』(マーゴット・ロビー主演)。この映画をきっかけに「ケリガンとハーディングはその後和解したのではないか」「実はハーディングは完全な被害者だったのではないか」という言説がネット上で頻繁に見られるようになりました。しかし、一次資料と本人の肉声を辿ると、実態は大きく異なります。
映画が描いた「視点」とケリガンの反応
映画『アイ, トーニャ』は、ハーディングの視点に寄り添い、彼女が受けた家庭内暴力や格差社会の歪みをブラックコメディ調に描いた作品です。この映画についてケリガン自身は、公開当時の米ボストン・グローブ紙などの取材に対し、「映画を見るつもりは一切ありません。私はあの事件を生き延びた当事者であり、あの悲劇はエンターテインメントではない」と明確に不快感を示しています。
「二人の和解」という誤解の真相
検索エンジン等で関心を集める「ハーディング ケリガン 和解」というキーワードですが、二人が個人的に親交を結んだり、真の意味で和解したという事実は存在しません。
事件から数年後の1998年、米FOXの特番などで顔を合わせる機会は設定されましたが、ハーディングが「直接の謝罪」を申し出た際も、ケリガンは礼儀正しく応じつつも、心からの親交を持つことはありませんでした。ケリガンは後年のインタビューで次のように語っています。
「許すということと、過去を帳消しにして親友になるということは全く別です。私は自分の人生を前に進めるために怒りを手放しましたが、だからといって彼女と語り合うべき共通の何かがあるわけではありません」
大衆が期待する「劇的な仲直り」を安易に演じることを拒否し、自らの心の境界線を守り抜いた大人の対応と言えます。