ネット上の掲示板やSNSで定期的に噴出するのが、「マカンはカイエンを買えない層が見栄を張るための廉価版ポルシェである」「アウディQ5の外装を変えただけのクルマ」という心ない揶揄です。しかし、この言説は自動車工学的な見地からも、実際のドライブフィールからも完全に的外れな偏見と言わざるを得ません。
確かに初代マカンのプラットフォームはアウディQ5と基礎骨格を共有して開発されましたが、ポルシェの開発陣はサスペンションジオメトリー、スプリング、ダンパー、ステアリングギアボックス、四輪駆動システムの制御プログラムに至るまで独自開発を徹底しました。何より決定的な違いはトランスミッションにあります。トルクコンバーター式ATを多用するカイエンに対し、マカンにはポルシェ伝統の超電磁的レスポンスを誇る「7速PDK」が奢られています(内燃機関モデル)。パドルシフトを引いた瞬間に針が跳ね上がる変速の電撃感とダイレクト感は、完全に「911」や「718ケイマン」の流れを汲むピュアスポーツのそれです。
また、所有心理の観点からも興味深い構図が存在します。社会学において論じられる「ステータス誇示のための見栄消費」に囚われる人ほど、「より大きく、より高価なカイエンでなければ意味がない」という強迫観念に陥りがちです。しかし、実際にポルシェのハンドルを握る本物のエンスージアストたちは、マカンの車重の軽さ(カイエン比で約200〜300kg軽量)がもたらす俊敏なノーズの入りや、ワインディングを意のままに操る快感を高く評価しています。マカンはカイエンの妥協的代替品ではなく、「ポルシェが本気で仕立てた背の高いスポーツハッチバック」という独立した存在価値を確立しています。