茶の湯の世界で絶大な信頼を集める丸久小山園の抹茶が品薄になっている理由の背景には、単なる一時的な流行にとどまらない構造的な需給ギャップが存在します。同園の公式広報や「元庵だより」の発表資料によると、北米や欧州、アジア諸国における「MATCHA」の健康志向・プレミアム嗜好の高まりに伴い、輸出およびインバウンド需要が過去最高水準を更新し続けています。
しかし、丸久小山園の抹茶は、茶園に覆いをして旨味を凝縮させた新芽を揉まずに乾燥させた「碾茶(てんちゃ)」を、昔ながらの御影石の石臼で1時間にわずか数十グラムという極めて遅い速度で丁寧に挽き上げます。機械による高速粉砕では摩擦熱によって繊細な香りや鮮やかな緑色が損なわれてしまうため、急増する注文に対して安易に増産することが物理的にできません。創業以来の理念である「品質本位の茶づくり」を死守する姿勢そのものが、供給量の限界を生み出しています。
この逼迫した状況を受け、丸久小山園の公式オンラインショップでは抹茶製品を「不定期販売」へとシフトさせ、転売対策を兼ねた1人あたりの購入個数制限を厳格化しています。丸久小山園の購入制限の現在における運用状況を見ても、1回の注文につき同一銘柄は2点〜3点まで、あるいは特定サイズの缶に限定されるなど、厳しい管理体制が敷かれています。2026年夏の工場見学受付の一時休止など、現場の生産・出荷キャパシティが極限状態にあることが公式のアナウンスからも浮き彫りとなっています。