アニメの話数が短縮された背景には、金額面だけでなく「現場の物理的限界」と「原作供給のサイクル」という二重の壁が存在します。大手スタジオのチーフプロデューサーが業界カンファレンスで吐露した「もはや昔のような力技のスケジュール管理は完全に破綻している」という言葉は、制作現場の切迫した実情を象徴しています。
第一の壁は、クリエイターの労務環境改善と作画密度のインフレです。かつて社会問題視された低賃金・長時間労働の是正が進み、最低賃金の引き上げやフリーランス保護新法の施行に伴って人件費は適正水準へと引き上げられました。同時に、視聴者の目が肥えたことで、1話あたりの総作画枚数は昭和期の3,000〜4,000枚程度から、現在では8,000〜10,000枚超へと倍増しています。撮影処理や3D背景の合成などポストプロダクション工程の複雑化も重なり、1エピソードを完成させるための工数は過去とは比較にならないほど膨らんでいます。
第二の壁が、極めて深刻な「原作ストック不足」です。昔のアニメでは、週刊少年誌の連載漫画にアニメが追いつきそうになると、通称「アニオリ(アニメオリジナルストーリー)」と呼ばれる独自の寄り道エピソードを何話も挟み込み、原作者の執筆時間を稼ぐ手法が常套手段でした。ときには1話丸ごと回想シーンだけで構成されたり、キャラクター同士が睨み合ったまま数分間会話を交わすだけの尺稼ぎが行われたりしたものです。
しかし、インターネットを通じて瞬時に感想が共有される現在、原作ファンは「原作に忠実な映像化」を強く求めます。完成度の低いオリジナル回を挿入すれば、たちまちSNSで炎上し、作品の評価そのものが失墜しかねません。さらに、月刊誌連載やウェブ発のコミック、ライトノベルなど、刊行ペースが緩やかな作品を原作とするケースが増加しました。無理に通年放送を強行すれば、わずか数カ月で原作のストックが枯渇してしまい、物語を途中で破綻させるリスクを負うことになります。