花の華やかさに目を奪われがちですが、般若寺は鎌倉時代の貴重な仏教美術・建築遺産の宝庫でもあります。歴史ファンならずとも絶対に見落とせないのが、境内南側に佇む国宝「楼門(ろうもん)」です。
治承4年(1180年)の平重衡による南都焼き討ち後、鎌倉時代中期に再建されたこの楼門は、我が国に現存する楼門建築の中でも屈指の古さを誇ります。下層に扉を設けず、太い円柱と簡素ながら力強い木組みで上層を支える構造は、質実剛健な中世武士の気風を今に伝えています。
さらに境内中央で圧倒的な存在感を放つのが、重要文化財に指定されている高さ約14.2メートルの「十三重石塔」です。宋から来日した名石工・伊行末(いぎょうまつ)が手掛けたとされ、均整の取れたプロポーションと精緻な如来坐像の彫刻は見事というほかありません。昭和39年(1964年)の解体修理時には、塔内から多数の金銅仏や納め物が発見され、学術的にも大きな注目を集めました。