京都という街は、繊細な昆布と鰹の「引き算の出汁文化」で知られる一方、ラーメンに関しては驚くほど濃厚なこってりスープや黒々とした醤油ダレを愛する二面性を持つ。その矛盾めいた懐の深さを証明するかのように、フロアには極端な個性を放つ店が隣り合う。札幌の濃厚な味噌が焼けたラードの香気で圧倒すれば、博多の極細ストレート麺を泳がせる白濁豚骨が骨太な旨味で対抗する。徳島ラーメンの甘辛い豚バラ肉と生卵の誘惑、あるいは喜多方の手揉み平打ち縮れ麺が湛える優しい透明感。歩幅にしてわずか数十歩のあいだに、日本列島の気候と風土が生んだ麺の地層が凝縮されている。
興味深いのは、出店ラインナップが固定化されず、時代の潮流や客の舌の肥え方に合わせて新陳代謝を繰り返している点だ。老舗の安定感に安住せず、常に全国各地でいま最も勢いのある潮流が持ち込まれる。だからこそ、数年ぶりに京都駅を訪れたリピーターすらも「いまどの暖簾をくぐるべきか」という嬉しい迷いに直面することになる。