日本のピアノ教育において、ソナチネといえば全音楽譜出版社などから出版されている通称『ソナチネアルバム』が代名詞です。この教則本に入ることが、初級者を脱して初中級者・中級者へと足を踏み入れたひとつの証明と見なされてきました。
多くのピアノ学習者は、導入教材である『バイエル教則本』を終えた後、『ブルグミュラー25の練習曲』を経て『ソナチネアルバム』へ進みます。バイエルとのレベル差は歴然としており、単に指を動かすだけでなく、左右の手の独立したコントロール、古典派特有の軽やかなスタッカート、きめ細やかなスラーの弾き分けといったアーティキュレーションの精度が一段と求められます。
『ソナチネアルバム』の前半を彩るのは、古典派の教育的作曲家として名高いクレメンティ(Muzio Clementi)とクーラウ(Friedrich Kuhlau)の作品群です。クレメンティのOp.36やクーラウのOp.20、Op.55などは、流麗なアルペジオや音階(スケール)の基礎を徹底的に磨くのに適しており、ピアノ練習曲としての完成度が極めて高いことで知られています。