1996年8月4日、午後5時41分。順天堂大学医学部附属順天堂医院で、国民的スター・渥美清は静かに息を引き取った。享年68。公表された直接の死因は、原発巣から転移した「肺がん」であった。
実はその発端は、逝去の数年前に遡る。1991年に肝臓がんが見つかり、極秘裏に大手術を受けていたのだ。だが、この事実は世間はおろか、親しい映画関係者にすら伏せられていた。晩年にはがん細胞が肺へと転移し、呼吸することすら著しい苦痛を伴う状態に陥っていたという。主治医や限られた家族だけがその凄絶な痛みを把握していたが、彼は意識が混濁することを嫌い、鎮痛剤の過剰投与を望まなかった。病床にあっても弱音を一切吐かず、ただ静かに自らの運命を受け入れていた姿は、孤高の表現者そのものだった。