全10話を通じて視聴者の心臓を鷲掴みにし続けたのが、法医解剖医・中堂系が8年間追い続けた連続殺人事件の謎です。彼の行動原理のすべては、かつての恋人であった糀谷由希子殺害事件の真相解明と、真犯人への私的復讐に集約されていました。
彼女の遺体の口内に残されていた「口蓋の赤い金魚の斑紋」。それは単なる毒物や病変ではなく、犯人が遺体の口内に押し込んだ「おもちゃのプラスチックボール」の突起パターンが死後硬直によって転写されたものでした。中堂がUDIラボで全国の変死体を非公式に調べ続け、葬儀屋の木林南雲を使って遺体を探させていた執念の裏には、自らの手で解剖し、容疑者として警察から疑われ、恋人を救えなかったという魂の牢獄に閉じ込められていた過酷な中堂系の過去が存在します。
この事件が迎える結末において、赤い金魚の犯人として浮上したのが、不動産屋の男・高瀬文人でした。高瀬は幼少期に母親から受けた凄惨な虐待体験に起因し、アルファベットの「AからZ」に見立てた26人もの女性を殺害し、遺体を様々な方法で遺棄・偽装していたシリアルキラーです。糀谷由希子はその「Y」の被害者でした。
さらに物語を戦慄させたのが、週刊誌のフリー記者・宍戸理一の介在です。宍戸は高瀬の異常な犯行を初期段階から察知しながら、警察に通報するどころか、自著のスクープ本として世に出すために殺人を記録・幇助し、高瀬をマニピュレートしていました。宍戸の犯行理由は、金銭欲以上に「時代の悪魔をプロデュースした唯一のジャーナリスト」という歪んだ自己顕示欲にほかなりません。高瀬に塩化水銀を用いた証拠隠滅を指示し、完全犯罪を演出することで中堂の復讐心を煽り、法医学の権威たちを自滅させようと目論んだ構図は、本作における悪意の頂点として描かれました。