児童文学・ファミリーアニメというジャンルが、一過性のブームに終わらず半世紀近くにわたって文化的インフラとして定着した背景には、普遍的な人間愛の存在がある。そして今、この高知の記念館は、日本の観光・テーマパーク産業におけるひとつの理想的なモデルケースとして再評価されている。
派手な絶叫マシンや最新のデジタル演出に頼る都市型アミューズメント施設とは対照的に、香美市立やなせたかし記念館が提供するのは「静寂と内省、そして自然との対話」だ。地方の山間部に位置しながらも年間を通じて国内外から安定した集客を維持し続けている理由は、ここが単なる消費の場ではなく、訪れる者が自らの原点に立ち返る「文化的聖地」として機能しているからにほかならない。
地域振興の文脈においても、JR四国の土讃線を走るアンパンマン列車や地元の食材を活かした地域連携など、過度な商業化を避けつつ地域全体で作品の世界観を守り育てる姿勢が貫かれている。コンテンツの持つ文化的価値を損なうことなく、持続可能な観光資源として昇華させる手法は、これからのテーマパーク産業が目指すべきひとつの指標を示している。