新潟名物として名高い栃尾あぶらげの最大の魅力は、噛んだ瞬間に心地よい音を立てるクリスピーな皮と、豆腐本来のコクを感じるエアリーな芯のコントラストです。この独特の構造は、一般的な薄揚げとは異なり、低温の菜種油でじっくり生地を膨らませた後、高温の油で一気に表面を揚げる「二度揚げ」という伝統製法によって作られています。
家庭でこの食感を再現する際、最大の障害となるのが「内部の水分が外皮へ移動してベチャつく現象」です。酒場の厨房では、強力な高火力グリラーを用いて短時間で表面の水分を飛ばし、油分を再活性化させてカリッと揚げたての状態に戻しています。家庭用調理機器でこの状態に近づけるには、器具ごとの特性を把握し、庫内をしっかり予熱してから加熱することが不可欠となります。
栃尾の油揚げの切り方にも重要なプロの鉄則があります。焼く前に一口大にカットしてしまうと、断面から大切な蒸気と大豆の水分が過剰に抜け落ち、パサパサした干物のような食感に陥ってしまいます。基本は「一本まるごと、あるいは具材を挟むポケット状の切り込みだけを入れて焼き上げ、食べる直前に包丁を入れる」ことが、ジューシーさを保つ最大の秘訣です。