『パワーパフ ガールズ』が世界中でカルト的人気を誇る最大の要因は、主役たち以上に強烈な陰影を放つ敵ヴィランたちの裏設定にあります。彼らは単なる舞台装置の悪役ではなく、各々が人間の持つエゴ、狂気、社会の歪みを戯画化したキャラクターとして描かれています。
モジョ・ジョジョ:ガールズと血を分けた「嫉妬に狂う元ペット」
頭部から露出した巨大な脳髄をターバン状のヘルメットで包み、過剰な重言(「私はモジョ・ジョジョ!街を征服するのだ、そう、街を我が手中に収めるのだ!」)を操る天才科学者猿。実は、彼こそがガールズ誕生の真の引き金を引いた張本人です。元々はユートニウム博士の研究助手であり、博士に溺愛されていたチンパンジーでした。しかし、ケミカルXの調合時に博士の腕を押して爆破事故を引き起こした際、漏れ出たケミカルXを浴びて知能が爆発的に発達。それと引き換えに、博士の関心が誕生したガールズへと完全に移ってしまったことで激しい疎外感と嫉妬に苛まれ、タウンズビル最大の宿敵へと堕ちていったという哀愁に満ちた過去を持っています。
カレ(HIM):子供向けアニメの限界を突破した「悪魔の具現化」
甲高い裏声と地を這うような重低音を使い分け、オネエ言葉で囁くロブスターのハサミを持った赤い怪異。公式設定上、その本名は「あまりに恐ろしすぎて口にすることすら禁忌」とされており、代名詞の「カレ(HIM)」と呼ばれています。物理的な破壊活動よりも、ガールズの精神的弱点、不信感、悪夢、家庭崩壊の危機を巧みに突くサイコホラー的知略を得意とします。ジェンダー規範を軽やかに無視した妖艶なヴィジュアルと、不可知の恐怖を体現する演出は、現在のアニメーション研究でも高く評価されています。
ラウディラフボーイズ:ガールズのアンチテーゼとして作られた不良少年
刑務所に収監されたモジョ・ジョジョが、刑務所の便器の中で「犬のしっぽ、スナイプス(毛虫やカタツムリ)、おたまじゃくし」、そして囚人の便器の水から抽出したケミカルXならぬ「男の子のエッセンス」を混ぜて作り出した対ガールズ用兵器。赤のブリック、青のブーマー、緑のブッチの3人組で構成されています。ガールズの能力を完全に凌駕する戦闘力を持っていましたが、初戦では「女の子からのキス」という純情さゆえの照れによって身体が拒絶反応を起こし、爆発四散するというユーモラスな弱点を突かれて敗北。後に「カレ」の手によって耐性を付与され、より凶悪なライバルとして復活を遂げました。
街を彩る愛すべき愚連隊たち
その他にも、ただの不良高校生グループでありながらリーダーのエースが後に実在の覆面バンド「ゴリラズ」の公式サポートメンバーに抜擢されるという異例の展開を見せたギャングリーン・ギャング、悪事を働こうとするもののあまりの無害さゆえにガールズから無視され続ける単細胞生物集団アメーバ・ボーイズ、自分の縄張りに入った者を容赦なく銃撃する排他的な田舎者モンスターファジー・ラムキンズなど、多様な社会病理をコミカルに昇華したキャラクターが脇を固めています。