この店を語る上で絶対に外せないのが、地元名産の蒲郡みかんを惜しげもなく丸ごとひとつ包み込んだ大福だ。果汁が溢れ出す果肉と、それをやさしく受け止める滑らかな白餡、そして極限まで薄く伸ばされた柔らかく腰のある求肥。この3つの要素が見事な黄金比率で調和している。
口に入れた瞬間に弾ける甘酸っぱい果汁は、重たくなりがちな和菓子のイメージをいい意味で裏切る。果実の水分量や糖度は季節や収穫時期によって微妙に変化するため、職人は毎日みかんの状態を見極め、餡の甘さや求肥の厚みをミクロン単位の感覚で調整しているという。この妥協のない職人魂こそが、リピーターを惹きつけてやまない最大の理由だろう。