津川雅彦が彗星のごとく銀幕に現れたのは1956年。日活が放った伝説的な名作『狂った果実』だった。石原慎太郎の同名小説を映画化した本作は、当時の若者文化を鮮烈に切り取った太陽族映画の金字塔として知られる。兄役の石原裕次郎とともに主演に抜擢されたのが、当時まだ16歳だった津川雅彦だ。
彼が演じた純粋無垢でありながら欲望に引き裂かれていく弟・春次の脆さと美しさは、日本映画界に激震を走らせた。湘南の海をバックに、ヨットの上で風に髪をなびかせる姿。兄への憧憬と嫉妬に揺れる繊細な表情。野性味あふれる石原裕次郎のダイナミズムとは対照的に、津川が放つ貴公子然としたルックスと内に秘めた狂気は、観客の心に強烈な爪痕を残した。