政孝の偉業を語る上で、スコットランド・グラスゴー出身の妻リタ(ジェシー・ロベルタ・コーワン)の存在を外すことはできない。大正時代、見知らぬ東洋の国へ嫁ぎ、太平洋戦争という過酷な時代をも乗り越えた彼女の生き様は、竹鶴家の家庭内においてどのように語り継がれているのだろうか。
子孫たちの証言によれば、家庭でのリタは極めて慎み深く、同時にスコットランド人らしいユーモアと強い意志を持った女性だったという。彼女が作ったシェパードパイやスコーンのレシピ、そして食卓で交わされた日英の言葉が混ざり合う会話の記憶は、現代の子孫たちの中にも生きている。単なる偉人伝のヒロインではなく、「家族を愛し抜いた生活者」としてのリタの姿が、一族の誇りとして脈々と息づいている。