2010年、ドラフト1位で関西学院大学・トヨタ自動車を経てロッテに入団した荻野貴司の登場は、プロ野球界にとってひとつの「事件」だった。開幕から破竹の勢いで安打を重ね、グラウンドを駆け巡る姿はまさに異次元。開幕からわずか46試合で25盗塁という驚異的なペースは、新人王どころか盗塁王のタイトルすら確実視されるほどのインパクトを残した。
しかし、神様は彼にあまりにも苛酷な試練を与えた。5月に右手人指し指を骨折すると、その後も膝の度重なる手術、太もも裏の肉離れ、肋骨の骨折など、シーズンが深まるたびに悲運に見舞われた。「荻野が1年間フルで出場すれば、チームは間違いなく優勝できる」。ファンや解説者が口を揃えてそう語る一方で、彼のキャリアは怪我との飽くなき戦いの連続でもあった。