冷戦終結後、民族紛争や内戦の激化にともない、従来の人道支援枠組みは大きな転換を迫られた。その最前線で苛烈な決断を下し続けた人物が、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の第8代弁務官を務めた緒方貞子である。
1990年代初頭の湾岸危機後、イラク北部に逃れたクルド系避難民に対し、緒方は従来の難民定義の枠を広げ、現場での積極的な保護活動を決断した。さらにバルカン半島の紛争では、武力衝突が続くなかでの支援物資輸送を強行。中立性を保ちながらも、目の前の命を救うために前例を打ち破る彼女の強いリーダーシップは、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)の存在意義を決定づけ、国家主権と人道介入のバランスに新たな一頁を画した。