近年、岩波書店をはじめとする各社から刊行される歴史ノンフィクションの潮流にも注目すべき動きがある。これまで遺族のタンスや地方の倉庫に眠っていた兵士の日記、未公開の公文書、あるいは名もなき市民の書簡を綿密に掘り起こした書籍が相次いで評価を集めている。
言論の自由と平和の重要性を訴え続ける日本ペンクラブなどの活動も支えとなり、歴史の空白を埋めるドキュメンタリーが次々と世に出ている。国家が描いた公式記録からはこぼれ落ちる、個々の兵士の恐怖、家族への思慕、そして理不尽な命令への葛藤。個人の肉声に基づいたノンフィクションは、歴史を抽象的な数字ではなく、血の通った一人ひとりの物語として捉え直す契機を与えてくれる。