照明が落とされた舞台袖。呼吸を整えるひとときの静寂の中、彼女は静かに目を閉じ、深く息を吸い込む。観客の期待が高まるホール内に一歩踏み出した瞬間、その華奢な身体から放たれた歌声は、空間の空気粒子を一変させるかのような圧倒的な響きを持って広がる。
羽山みずきの歌唱力の真髄は、どこまでも伸びやかで透明感にあふれる高音と、歌詞の一文字一文字に心を宿す繊細な節回しにある。単に音程が正確であるという技術的な巧みさを超え、聴く者の胸の奥深くに眠る郷愁や愛おしさを呼び覚ます力があるのだ。リハーサル中、音響スタッフやバンドメンバーとミリ単位のニュアンスを真剣に確認し合う姿からは、自らの表現に対する妥協なきプロ意識が溢れ出ていた。