怪我前のスタイルをそのまま踏襲することは物理的に不可能だった。大腿骨の骨折という大手術を経た体は、かつてと同じ負荷のかけ方を拒むからだ。そこで彼が取り組んだのが、体幹を中心としたまったく新しい投球メカニズムの構築だった。軸足に頼りすぎず、骨盤の回転と腕の振りを同調させる効率的なフォームへの移行である。
このフォーム改修により、球持ちの良さが飛躍的に向上した。ストレートの球速数値以上に打者に圧迫感を与える「伸び」が生まれ、決め球であるスライダーやチェンジアップの落差も一段と増した。怪我という最大の試練を、自らの投げ方を見直し進化させる契機へと変えてみせた技術的探求心には脱帽するしかない。