公開当時の興行的な苦戦から、いかにして本作が「時代を先取りしすぎた傑作」へと再評価されたのか。その世論の劇的な変遷を検証します。
公開当時の興行的な挫折と戸惑い
1990年の北米公開時、本作の興行収入は約4148万ドルにとどまりました。前作の1億5000万ドル超から大幅にダウンし、巨額の制作費5000万ドルを回収するには至りませんでした。
当時の映画評や観客の出口調査の記録を紐解くと、最大の要因は「作風の激変による観客の混乱」でした。前作『グレムリン』は、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮らしい80年代の古き良きアメリカの田舎町を舞台にした、ジュブナイル仕立てのダークサスペンス・ホラーでした。観客は同様の「少し怖くて心温まるクリーチャー映画」を期待して劇場に足を運んだのに対し、提示されたのはニューヨークの超高層ビルを舞台にした、ルーニー・テューンズ直系のナンセンス・ギャグとブラックな業界パロディの奔流だったのです。あまりの方向転換に、当時のライト層は戸惑いを隠せませんでした。
2000年代以降の爆発的なカルト化とネットの熱量
しかし、インターネットの普及とともに映画ファンのコミュニティが形成されるにつれ、評価は180度覆ることになります。米大手批評サイトRotten Tomatoesにおいて、本作の批評家支持率は70%以上の好スコアを維持しており、Filmarksや5ちゃんねる、X(旧Twitter)などの国内コミュニティでも絶賛の声が支配的です。
ネット上に寄せられているリアルな声を分析すると、以下のような意見が多数を占めています。
- 「子供の頃はただただ賑やかで面白いパニック映画だと思っていたが、大人になって見返すと、トランプ政権を予見していたかのようなクランプ社ビルの描写や、メディア社会への痛烈な批判に鳥肌が立つ」
- 「映画のフィルムが切れるシーンの衝撃は今見ても新鮮。映画そのものをオモチャにして遊ぶジョー・ダンテの勇気に脱帽する」
- 「アメリカの有名コメディ番組『キー&ピール(Key & Peele)』の伝説的なグレムリン2企画会議コントを見てから本編を観直したら、あまりにもコント通りの狂った映画で死ぬほど笑った」
- 「CGではなく実物のパペットだからこそ、グレムリンたちの皮膚の質感や粘液のテカリが生々しく、画面から溢れ出る熱量が今のデジタル映画とは段違い」
現代の批評空間では、『マトリックス レザレクションズ』や『デッドプール』のように「自らの作品構造やスタジオの商業主義をメタ的に批評する映画」が市民権を得ていますが、『グレムリン2』はそれらを30年以上も前に完璧な完成度でやり切っていたポストモダン映画の先駆者として、今や確固たる地位を確立しています。