全国の鰻文化を語る上で欠かせないのが、調理法の地域差と派生メニューの存在です。旅行先や出張先で鰻屋を訪れた際、仕上がりの食感に驚く人が後を絶ちません。
代表的なのが関東風と関西風の焼き方の違いです。武士の街であった江戸(関東)では、「切腹」を連想させる腹開きを忌避し、背中から包丁を入れる「背開き」が定着しました。さらに、一度素焼きした後に蒸し器でじっくり脂を落としてからタレをつけて焼くため、箸でスッと切れるほどふわふわで柔らかい食感に仕上がります。
対照的に、商人の街であった上方(関西)では、「腹を割って話す」という気風から「腹開き」が好まれました。蒸しの工程を一切挟まず、炭火の強火で一気に焼き上げる「地焼き(直焼き)」を行うため、皮目はパリッと香ばしく、身にはうなぎ本来の濃厚な脂と弾力が凝縮されます。
さらに、これらとは一線を画す独自の進化を遂げたのが名古屋名物の「ひつまぶし」です。ひつまぶしとの違いは、器がおひつである点だけでなく、細かく刻まれた蒲焼を3段階で味わう点にあります。1杯目はそのまま素材の味を楽しみ、2杯目はネギやワサビ、海苔の薬味を添えてさっぱりといただき、3杯目は温かい出汁をかけてお茶漬けとして流し込む。うなぎの脂と出汁の調和を追求した、極めて完成度の高い食の様式美といえます。