全国の飲食店で見かける「ひつまぶし」という名称ですが、実は株式会社あつた蓬莱軒が保有する登録商標(商標登録番号 第1996631号)です。明治時代、出前用の瀬戸物茶碗が割れるのを防ぐため、大きめの木桶(お櫃)に鰻とご飯を「混ぜて(まぶして)」数人前で提供したのが語源とされています。
インターネット上で囁かれるいくつかの俗説について、現場取材から得られた客観的事実をもとに検証します。
誤解1:「本店と支店でタレの味や鰻の焼き加減が違う?」
一部の掲示板等で「支店は機械焼きではないか」という噂が散見されますが、これは明白な事実無根です。あつた蓬莱軒では、すべての支店において熟練の職人が備長炭の前に立ち、手作業でうちわを仰ぎながら焼き上げています。タレも本店で調合された門外不出のものが各店へ配給されており、味の設計思想に差異はありません。ただし、本店の歴史ある木造建築がもたらす空間演出(庭園の緑、木の温もり)が、味覚の知覚価値を一層高めている心理的要因は否定できません。
誤解2:「三河一色の鰻しか使っていない?」
あつた蓬莱軒の鰻は愛知県西尾市の一色産が有名ですが、年間を通じて膨大な需要を支えるため、同社では国内最高峰の産地(宮崎県、鹿児島県、静岡県など)から、その時期に最も脂の乗りが良い国産新仔(しんこ)うなぎ等を厳選して仕入れています。産地名のブランドだけに拘泥せず、「その日の炭火の火力に負けない肉厚な国産鰻」を職人の鑑識眼で選び抜いているのが真相です。