台湾料理を口にした瞬間、鼻腔を抜ける独特のエキゾチックな香り。あの風味の根幹を担っているのが、中国・台湾の伝統的ミックススパイスである五香粉(ウーシャンフェン)と、単体でも強烈な個性を放つ八角(スターアニス)です。
五香粉はその名が示す通り、5種類前後の生薬・スパイスを黄金比で配合したブレンド調味料です。配合の基本構成は以下の通りです。
- 八角(スターアニス):アネトール由来の甘くアロマティックな芳香とほのかな苦味
- 桂皮(シナモン/カシア):肉の旨味を引き立てる濃厚でスパイシーな甘い香り
- 丁香(クローブ):刺激的で爽快感のあるシャープな芳香と防腐効果
- 花椒(四川山椒):舌を刺激する心地よい痺れと柑橘系の華やかなトップノート
- 小茴香(フェンネル)または陳皮(乾燥ミカンの皮):清涼感と後味のキレを整えるアクセント
台湾料理において八角が絶大な人気を誇る理由は、豚肉や鶏肉などの脂っこさを相殺し、醤油や氷砂糖の甘辛いタレと結合してメイラード反応を劇的に深める化学的特性にあります。じっくり煮込むことで豚の脂に芳香成分が溶け込み、冷めても香りが失われない重層的なコクが生み出されます。
さらに見逃せないのが、台湾の香味を語る上で欠かせない「油葱酥(ヨウツォンスー=エシャロットの油揚げ)」です。現地で紅葱頭と呼ばれる赤エシャロットをラードで揚げたもので、五香粉の鋭いスパイシーさをまろやかなコクで包み込む役割を果たしています。