結婚当初、世間が最も注視したのは「大スターである藤原紀香が、黒衣に徹するべき梨園の妻を務められるのか」という点でした。歌舞伎界には古くから伝わる不文律が多く、妻は夫を立て、劇場の裏方に徹することが美徳とされてきたからです。
しかし、劇場関係者や長年の歌舞伎ファンの証言によると、その懸念は瞬く間に払拭されました。本興行の初日や千秋楽において、藤原紀香が着物姿で劇場ロビーに立ち、後援会やご贔屓筋(ひいきすじ)一人ひとりに深々とお辞儀をして挨拶を交わす姿は、今や歌舞伎座や南座の風物詩となっています。決して派手すぎず、夫の演目や季節に合わせた格調高い訪問着を身に纏い、控えめながらも細やかな気配りを徹底する姿勢は、厳しい目を持つ贔屓筋からも絶大な信頼を獲得するに至りました。
また、女優としての自身の仕事も継続しながら、愛之助の公演期間中は早朝から劇場入りし、終演後も関係者対応を行うなど、裏方としての責任を完璧に果たす姿は「歴代の梨園の妻の中でもトップクラスのタフさと誠実さ」と高く評価されています。