フレグランスの解説でムスクの香りは、しばしば「洗いたての高級石鹸」「清潔なリネン」「ベビーパウダー」「ほのかに温かい人の素肌」と形容されます。単一のフルーツや花のようにわかりやすい自己主張をするのではなく、甘さと温かみ、そして透明感のある清潔感が複雑に絡み合った奥深い香調を持っています。
調香の現場において、ムスクは香りを長く肌に定着させる「保留剤(フィキササティブ)」としての重要な役割を担っています。トップノートの柑橘類やミドルノートのフローラルが揮発した後に現れ、つける人の体温や肌の皮脂と混ざり合うことで、その人だけの独自の香り(スキンパフューム)へと変化していきます。
「つけている本人よりも、すれ違った他人が心地よいと感じる」と言われる理由は、この肌馴染みの良さと、強すぎない拡散性にあります。