旅人の多くが抱く最大の疑問が、「山梨のほうとうと何が違うのか」という点です。どちらも幅広の平打ちうどんを生のまま野菜と煮込む料理ですが、その構造と味付けの設計思想には明確な境界線が存在します。
山梨のほうとうが「煮干し出汁にカボチャを煮崩し、赤味噌主体のつゆにとろみを溶け込ませる」ことを基本様式とするのに対し、群馬のおきりこみは「乾椎茸や煮干し、鶏ガラなどを基調に、大根・人参・ごぼう・里芋といった根菜の水分と旨味を引き出し、醤油(または合わせ味噌)でまとめる」スタイルが基本です。また、麺の形状においても、ほうとうが比較的厚みを持たせるのに対し、おきりこみはやや薄く平らで、つるりとした喉越しとしなやかさを重視する傾向があります。
同じ群馬県内の名物である「桐生ひもかわうどん」との混同も見られますが、ひもかわは麺の幅が数センチから十数センチに達する「麺そのもののインパクトと滑らかな舌触り」を愉しむ料理であり、多くは別茹でしてつけ汁やかけ汁で提供されます。対照的におきりこみは、「煮込みによる一体感と濃厚なとろみ」を追求した鍋料理としての性格が極めて強いという違いがあります。