白うさぎの最もダークな側面が露わになるのが、第4章「白うさぎが小さなビルを送り込む」のエピソードです。
白うさぎの命令で手袋を取りに彼の家に入ったアリスは、置いてあった小瓶の液体を飲んで身体が巨大化してしまいます。部屋いっぱいに巨大化したアリスの手足が窓や煙突から突き出し、身動きが取れなくなると、白うさぎはパニックに陥り激怒します。
白うさぎは庭師のモルモット「パット」やトカゲの「ビル」を呼びつけ、ビルを無理やり煙突から侵入させてアリスを排除しようとします。それが失敗すると、白うさぎは迷うことなく次の指示を出します。
「よし、家ごと焼き払ってしまえ!(We must burn the house down!)」
中に人間(あるいは得体の知れない怪物)がいると知りながら、自らの屋敷に放火して生きたまま焼き殺そうとする冷酷さは、ディズニー版しか知らない読者が原作を読むと最も戦慄するポイントです。最終的にアリスは庭から投げ込まれた小石がケーキに変わったのを食べて縮小し脱出しますが、白うさぎの残酷なまでの自己防衛本能が浮き彫りになる象徴的シーンです。