メディアやSNSでは「不気味な廃墟」として消費されがちなスポットですが、現地を取材すると、単なるノスタルジーでは片付けられない厳しい現実が浮き彫りになります。
長崎港から船で約40分の場所に位置する軍艦島(端島)では、波浪と潮風によるコンクリートの劣化が年々深刻さを増しています。長崎市の保全事業により一部の護岸や見学デッキは維持されているものの、日本最古の7階建て鉄筋コンクリート造アパート「30号棟」をはじめとする主要建築物は、大雨や台風のたびに一部崩壊を繰り返しています。現地ガイドによると、「今の景観が保たれるのはあと数年かもしれない」という声が現場スタッフからも漏れるほど、保全のタイムリミットが迫っています。
一方、2007年に財政再建団体(現・財政再生団体)に転落した北海道夕張市では、「ゴーストタウン化を食い止める」ための実利的な戦いが続いています。最盛期に11万人を超えた人口は6,000人台まで激減しましたが、市役所や診療所、商業施設を駅周辺の数キロ圏内に集約する「コンパクトシティ政策」が本格稼働。旧炭鉱集落エリアでは街灯が消え、自然に還りつつある地域が存在する一方で、中心拠点では高齢者の生活インフラ維持に向けた再編が進んでいます。「街全体が廃墟になった」と外野から決めつけるのは明確な誤解であり、地域が生き残りを賭けて縮小管理(スマートシュリンク)を行っているのが実態です。