近年、犯罪映画のトレンドは劇的な創作から、現実に起きた事件を冷徹に描写するノンフィクション・サスペンスへと大きくシフトしている。観客が求めているのは、過度に美化されたフィクションではなく、血の通った「現実の狂気」だ。特に実在の未解決事件や暗部を暴くトゥルー・クライムジャンルは、世界中の映画ファンを熱狂させている。
フィンチャーが手がける最新作も、この潮流の頂点に位置づけられる。実在の人物たちの会話録音や公文書の開示請求によって得られた膨大な一次資料をもとに構成された脚本は、従来のサスペンス映画にありがちな脚色を極限まで排除。圧倒的な没入感と緊張感をもたらす映像体験として結実しつつある。