2012年12月に発生した天井板崩落事故は、走行中の車両を直撃し、9名の尊い命を奪う未曾有の惨事となった。アンカーボルトの接着剤劣化や腐食が長年見過ごされていた事実が発覚し、それまでの目視中心だった点検体制の不備が白日の下に晒された。
事故直後、国土交通省は全国のトンネルおよび道路橋梁に対する緊急点検を実施。当時の国土交通大臣であった根本匠氏の主導のもと、法制度の抜本的見直しが行われた。5年に1度の近接目視・打音点検を法律で義務付ける体制が確立されたのは、この事故がもたらした直接的な教訓である。
事故から10年以上が経過した現在、安全対策は「打音」からさらに進化を遂げている。AIによる画像解析、赤外線サーモグラフィ、高精度3Dレーザースキャン、さらにはドローンを活用した自律型の点検構造が現場へ実装されている。目に見えない内部の空洞や微小な亀裂を早期発見する予防保全型インフラ管理への転換こそが、現場が辿り着いた悲劇の防止策である。