ネット上の一部では「感染症の麻疹(はしか)にかかったときの不快感が語源ではないか」という噂が散見されますが、これは言語学的に順序が逆です。
「はしかい」の語源は、古語の形容詞「はしかし(芒し・端険し)」に遡ります。
漢字の「芒(はしか・のぎ)」とは、稲や麦などの穀物の実の先端にある針状のトゲ(毛のような突起)を指す言葉です。稲刈りや脱穀の際、この細かい芒が衣服の隙間から皮膚に触れると、非常にチクチクとした痛痒さを引き起こします。この「芒が刺さるような鋭い刺激」を表す言葉として「はしかし」が生まれ、時代を経て「はしかい」へと変化しました。
病気の「麻疹(はしか)」という名称自体も、発疹が出て皮膚がチクチク痛痒くなる症状が「はしかい(芒が生えたような状態)」に似ていることから名付けられたという説が有力です。つまり、病気から言葉が生まれたのではなく、「チクチクする刺激(芒し)」が先に存在していたのです。
さらに、「先端が尖っていて鋭い」という原義から派生して、「動きが鋭い」「機敏である」「頭の回転が速く抜け目がない」という人物描写(山梨や北関東などで使われる意味)へと意味の広がりを見せたと考えられています。