故事成語「完璧(かんぺき)」の語源となったのが、この「完璧帰趙(璧を全うして趙に帰る)」のエピソードです。
秦の昭襄王から「秦の15の城と趙の宝玉・和氏の璧を交換したい」という申し出が届きます。断れば攻め込まれ、璧を渡せば騙し取られる可能性が高い絶体絶命の状況下で、使者として名乗りを上げたのが藺相如でした。
秦の宮廷で璧を手渡した藺相如は、秦王に城を明け渡す気がないと見抜くやいなや、「璧にはわずかな傷がございます。お見せいたしましょう」と巧みに璧を取り戻します。そして柱を背にし、髪が冠を突き上げるほど怒り狂った形相でこう言い放ちました。
「大王が約束を守らないのであれば、私の頭ごとこの璧を柱に打ち付けて粉砕いたします!」
宝玉を惜しんだ秦王を押し包み、5日間の潔斎(身を清める儀式)を要求している間に、藺相如は従者に変装させて璧を密かに趙へ持ち帰らせました。命を賭して趙の財産と国家のメンツを守り抜いた功績により、藺相如は上大夫へと大出世を果たします。